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このとき、マネジドケアが理想的に機能すれば、患者は自分が受けている医療サービス内容について、自分たちの側について監督してくれる医師を持つことになる。
医療提供システムがここまで到達できれば、患者はもはや「買わされるサービス」が何なのかが分からなどといった特殊な市場の消費者ではなくなる。
患者の立場が一変する時代の到来はけっして夢物語ではない。
このように市場が機能する時代へ向けて拍車をかけるのが「医療標準」の実現である。
先に触れたDRG/PPSは、医療標準と表裏一体である。
前者は医療費支払い方法であるが、疾病単位での治療内容の特定が不可欠である。
そして、後者はまさにそれにアプローチをかけるものである。
そのため、どちらか一方が完成すれば、他方も完成するといえる。
実際、医療標準を実用化するためのシールは揃いつつある。
最近話題の医療機関のための電子カルテシステムやクリティカル・パスがそうである。
電子カルテは、そもそも患者の診療録を電子媒体に記録してペーパーレスを実現しようとするものであったが、その実用化の過程で明らかになったことは、データ入力や検索に当たって、コンピュータ化以前の問題が存在することであった。
簡単にいうと、同じ疾患や治療処置の名称が医師の出身校や指導した教授によって異なっているため、コンピュータでデータベースを構築するには経済性に問題があったのである。
しかし、病院経営の合理化が求められる時代になって、ようやくこの問題に妥協が図られようとしている。
こうして電子カルテが実用化されると、医療用語の名称が統一されるだけでなく、電子媒体化されたデータをもとに各疾病別に行われた治療内容の統計分析が容易に行えることになり、医療標準の根拠を明らかにするのに役立つのである。
また、クリティカル・パスの開発が進めば、入院患者について標準的な治療の日程管理計画が容易にでき、また、合理的な退院とその後の治療管理へと結びつくが、そのことが入院医療についての医療標準の根拠を明らかにするのに役立つのである。
このほかにも、患者のための医療標準との見方からすれば、標準化されたサービスを顧客である患者に理解を求めるためのインフォームド・コンセントも重要これらのシールを組織的に使って、医療購買者の立場で成果を上げているのがマネジドケア組織といえるが、彼らの情報化投資は並大抵のものではない。
しかし、そのお陰で、長らく遅れていた医療サービス分野の情報化が、米国では一挙に進む状況にある。
高度技術の多種少量サービスである医療も、その業務を独占する医師の数が倍増して売り手市場から買い手市場へと移る一方で、医療標準が、細かい診療内容はともかくとして、病気を治すのにいくらかかるかを教えるようになるので、患者は医療サービスを買いやすくなる。
それに加えて、医療サービス市場はますます大きくなる可能性があるが、民間医療保険の参入が現実のものとなって、はじめて「ファイナンスされうる市場」となる。
つまり、わが国政府は、病気のため生活を続けることが困難となるカタストロフィックな事態に備えた医療保険として国民皆保険を実施し、運営してきたが、その実態はいつでも、どこでも気軽に医療機関にかかれるというアクセスの良さで国民の満足を図るもので、その結果、単純な風邪ひきでも、本来は入院患者のための施設である病院を使うことを許してきた。
方で、医療の需要を医療保険財政の枠内に押し込めてきたという経緯がある。
このことは本書の冒頭で「国民医療費」なるものの解説のところで触れたとおりである。
しかし、医療標準の実用化により、疾病の経済的リスクを合理的に予測できるようになると、たとえば、政府の医療保険介入は高齢者や生活保護世帯に向けたもの以外は、純粋にカタストロフィックな疾病に限定することも可能である。
そして、それ以外の医療保険の運営は公営・民営のいずれであってもよくなる。
そこで、医療保険のミニマム・セットを手にした国民は、必要だと考える付加的な医療保険を自己責任で選択できるような仕組みになると、もはや保険財政枠に限られた医療サービスの消費を強いられることはなくなる。
おそらく、医療サービス市場はずっと勢いを増して大きくなるであろう。
ただし、そこでは患者の消費者意識は必然的に高まることにもなろう。
医療サービス提供は少子超高齢化成熟社会においては、国民が求める基本的要件となるので、それを政府の財政事情だけから抑制を行うことにはもともと無理があるともいえる。
むしろ、その求めに応じた医療改革を推し進めることのほうが自然かもしれない。
つぎに、図中に描いた医療審議会の規制緩和検討について考えてみたい。
既に説明したように政府の章医療改革施策はいずれも患者負担増につながるため、国民は何らかの自己防衛手段を真剣に考える一方で、その不満から医療や保険の「効率改善」を求めてくることになろう。
その社会問題を想定して他の先進国に学ぼうとすると、以前から議論されている営利法人の病院経営参入や、あるいは、あらたに何らかの形で患者負担増につながる。
藍電/患者パラダイムの変換、すなわち構造の規制緩和については、意外と世論に取り上げられずにいる。
もっとも、いまのところ、わが国では第三分野の保険と呼ばれる民間医療保険、なかでも特定疾病保障保険は、米国との貿易摩擦の落とし子ともいえる日米保険協議の取り決め対象となっている。
その結果、米国の保険会社だけが優遇されているという状況である。
これが、二〇〇一年には国内の保険会社も扱えるようになるという。
その頃にはガン保険などといった特定の疾病保険だけではなく、公的医療保険体制を補完する一般医療保険の需要を予想するのが、公民二層構造の医療保険構想である。
規制緩和の流れの中でどのようなスケジュールで世論の姐上に上るのか全く見当がつかないが、今ここで指摘しておきたいことは、民間医療保険つまり、半世紀以上にもわたって、長らく民間医療保険が禁止されてきたため、世界有数の保険大国といわれるわが国の民間保険会社も、現在のところは医療保険を引き受けるためのリスクマネジメントのノウハウを持たないに等しいことが危倶される。
とりあえずは先行している他の民間医療保険先進国の保険会社と提携することが考えられるが、このときに最も進んだ医療費管理技術を持つ米国のマネジドケア組織に注目が集まるのは自然であろう。
ただし、実際の病院経営を考えてみると、現場が多少なりともわかった人が上にあがって管理者になるのが日本的経営の美徳でもある。
だから、現場の技術者が経営の論理を身につけるのが一番よいのではないか高原“ケーススタディなどで現実の経営について学ぶとともに、やはり論理を身につけることが必要になる。
日本人は見よう見まねで経験を積んで覚えるのはそこそこうまくできるけれど、それでは論理は身につかない。
米国でマネジドケア医療保険、HMOが進化した結果、メリット・デメリットはあるものの、病院も医師も共に医療提供条件の交渉相手は保険者ということになった。
この点ではわが国をはじめとする公的医療保険制度国のシステムに似てきたともいえる。
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